【美浦TC】新規開業調教師に聞いてみました☆(その2)

トレセンブログを読んでくださっているみなさま、こんにちは。

お待ちかねの新規開業調教師インタビューの第2弾です。

 

 

201102023

 

 

今回は小野次郎騎手の登場です。

 

今月一杯で鞭を置き、調教師として新たなステージへと進む小野次郎騎手。

騎手時代の思い出や厩舎運営について。はたまたプライベートなことまで色々な質問に答えていただきました。

 

 

Q:こんにちは。本日はよろしくお願いします。

小野騎手(以下、小):よろしくお願いします。

 

Q:騎手から調教師に転身されるということになりますが、騎手は何年間やられたのですか?

小:平成元年のデビューだからもう22年間になりますね。

 

Q:騎手時代を振り返ってみていかがですか?

小:G1に勝ちたかったという気持ちはあります。でも重賞は勝てましたし恵まれた騎手人生だったかなと思います。

 

Q:一番思い出に残っているレースは何になりますか?

小:よく聞かれるんですけどね。あえて一つとなるとなぁ。レースの勝ち負けっていうのは乗っている馬にもよるんで、一つにはなかなか決められないですね。あえて思い出に残ってるということで言えば、初勝利とか初重賞とかになるんでしょうけどね。すべての馬に感謝したいと思います。

 

 

Q:調教師を目指したきっかけというのをお伺いします。いつごろから転身を考えていらっしゃったんですか?

小:受験自体は3回目でした。ただ、その前から調教というものに対する興味が湧いてきていたんです。トレセンでの調教は調教師の指示に従ってやるというのが普通ですよね。でも、ローカル競馬場での滞在競馬になると、一頭をある程度任せて貰えるんです。自分なりに工夫をして馬を作っていくんですが、自分が調教をつけた馬が競馬で出した結果によって試行錯誤していくことになります。そういうことやっている中で、自分の考えで競走馬を作っていきたいという思いが強くなってきて、いずれは調教師を目指そうと気持ちになりました。それに加えて直接的な理由として、ここ数年の成績や乗鞍数が落ちてきていたということ、また年齢的にも、今は40歳ですが、そろそろではないかというのがありました。そういう諸々の理由が重なったというのが大きいですね。

 

Q:なるほど。調教師試験は難しかったですか?

小:そうですね。知識として馬に乗っていることで覚えてはいるんですが、それを答案用紙に解答という形で書く、というのがなかなか難しかったですね。感覚的に覚えていることを、他の人に分かるように文章の形で書くというところがね。

 

Q:試験が終わった時の手ごたえはいかがだったんですか?

小:自信は全くなかったです。終わった瞬間、また一年勉強しないといけないのか、と思いました(笑)。

 

Q:合格発表はどちらでご覧になったんですか?

小:調教スタンドに10:00に貼り出されるんですよね。当日はすでに調教は終わっていたので、時間前に近くまで行ったんですが、新聞記者とかカメラマンの方々がすでにたくさんいるんですよ。2次試験って番号ではなく名前で貼り出されちゃうので、見ないで家に帰りました(笑)。

家でホームページで確認しようと思って、「10時前に出ないかな」なんて思いながら探したんですけど、時間前には出ないですよねぇ。結局ホームページで見る前に、貼り出された合格発表見た人から電話がかかってきてそれで合格を知ったんです(笑)。

 

Q:(笑)。合格を知った時はいかがでした?

小:ほっとしましたね。

 

Q:合格はどなたに最初に知らせたんですか?

小:誰かに伝える前に、色々な方々からお祝いの電話などをいただきまして。それに応対しているうちに一日が過ぎちゃったって感じでした。

 

 

Q:それでは次は調教についてお伺いします。

 トレセン内には調教用の色々な施設があるわけなんですが、どのようなスタイルで調教をしたいと考えてらっしゃいますか?

小:施設が非常に充実しているので、一つのスタイルにこだわらずに、色々なことを試していきたいです。その中で個々の馬にあったやり方を見つけていこうと思っています。

 

Q:レースの使い方については何か考えていることはありますか?

小:基本的には馬のタイプに寄りますね。日々調教を行う中で、レース間隔を詰めた方がいいのか、逆に開けた方がいいのかを見極めようと思います。馬の成長に合わせた使い方をしていきたいですね。

 

Q:小野さんの場合は、合格から開業まで余り時間がないんですが、準備は順調にすすんでますか?

小:馬集めが本当に大変で。厳しいですね(笑)。でもやるしかないですから。

 

Q:調教コースで好きなコースとかはあるんでしょうか?

小:最近は坂路コースが主流にはなっているんですが、基本的にはフラットワークっていうんですかね、角馬場等の平らなコースで馬とのコミュニケーションを図りながらストレッチ等をして、そこから広い馬場に出ていくという形ですかね。馬の息を作るためには坂路コースよりも平らなコースの方が有効なのではないか、という気がしています。

 ニューポリトラックなんかの新しい調教コースもあるんですが、競馬は結局のところ芝とダートしかないので、そういうものを体験させるのも重要でしょう。新しいコースは足元にはいいんですけどね。

 

Q:理想とする厩舎像などはありますか?

小:スタッフが一つとなり、自厩舎にいるすべての馬のことをスタッフ全員が共有している、というような厩舎をつくっていきたいです。

 

Q:チームカラーなんかは決められてるんでしょうか?

小:茶色系ですね。同時に開業する栗田徹調教師とかぶってるらしいんですよ。「小野さん、茶色なんですかっ!?僕もなんですよ」っていうから「仕方ないじゃん」って答えましたけど(笑)。あんまり目立つのは好きじゃないのでひっそりとした色で(笑)。

 

 

Q:それでは次に騎手についてお伺いします。

 レースではどんな騎手を乗せたいとかどんな騎手に乗って欲しいとかはありますか?

小:馬主さんの意向もありますのでそれを伺いながら、馬に合せて選択していくという形になります。

 

 

Q:馬主さんから「全部まかすよ」というお話があった場合はどのようになりますか?

小:そうですねぇ。騎手としての経験から、どの騎手がどのようなタイプなのかというのは全部頭に入っています。上位下位ということではなく、この馬にはこの騎手があう、というのを見定めて決めたいと思います。好き嫌いではなくあくまでも合うか合わないかが判断基準ですね。

 

Q:仲の良い騎手というとどなたになるんですか?

小:仲が良いというか可愛がっているという意味では、弟弟子なんですけど、中谷雄太騎手ですね。あとは田中勝春騎手は同期なので。カツハル頑張れっ(笑)。関東だと同期はもう勝春だけなんですよ。

 

Q:同期の方は他にはどんな方が?

小:佐藤哲三騎手とか。あ、現役の騎手はもう2人だけですね。角田晃一も調教師になりましたから。

 

Q:角田さんと佐藤哲さんは同期ですか。そういえば、小野さんと佐藤哲さんはなんとなくイメージが似ているな、なんて思ってたんですけど。

小:いや、僕はもっと丸くなりましたよ。あいつはまだまだ丸くなってません(笑)。僕の方が先に丸くなりました。俺もあいつ怖いもん(笑)。

 

Q:小野さんは丸くなりましたか。

小:そう思います。多分昔のままだったら調教師試験も合格してなかったんじゃないかなぁ。

 

Q:同期同士は仲がいいんですか?

小:集まってパーッと騒ぐって感じではないですね。まあ普通にかな。

 

Q:次は競馬場についてお伺いしたいと思います。かといってどこの競馬場が乗りやすいのか、といった話ではないんですけど。行ってて楽しいとかおいしい店があるから好きといった競馬場はどこですか?

小:小倉かな。街が近いし、物価も安いし、女の子も優しいし(笑)。

 

 

Q:小倉では食べ物は何がいいですか?

小:魚ですね。今の時期だと高いんですけど、フグとかクエとか。昔の人に言わせると小倉といえば雑炊らしいんですけどね。あと、小倉に出張行く人がいたら、みんなに明太子買ってきてくれるよう頼んでます。

 

 

Q:競馬場では他にはありますか?

小:函館もいいですね。妻が函館出身なんでというのはあるんですけど、競馬は夏の時期だから涼しいし。やっぱり北海道はいいですね。札幌もススキノ近いし(笑)。

 

Q:街が近くて楽しいところがお好きと(笑)。

小:(笑)。北海道はやっぱり時期的にも涼しいじゃないですか。ゴルフ場なんかも冬の間はクローズしてるから、夏に行くと芝の状態がすごくいいんですよ。

 

 

Q:さて、ここからは少し競馬からは離れた質問をさせてください。まず就職シーズンを前にこんな質問を用意してみました。新社会人になったかたへの定番の質問で「初任給は何に使いますか」というのがありますが、「初賞金は何に使いますか」と聞かせてください。

小:厩舎への設備投資で全て消えてなくなると思います(笑)。

 

Q:どんな設備投資をされる計画なんですか?

小:ミストとかエアコンとかやりたいことはたくさんあるんですけど、やっぱり高いんですよね。とにかく馬のための環境を良くするような設備投資をしていきたいです。「初任給」じゃ全く足りないと思いますよ(笑)。

 

Q:次は生活サイクルについて伺います。今はどのようなサイクルで生活されているんですか?

小:朝はトレセンでの調教に来たり、入厩予定の馬が牧場にいるのでそこに行って自分で乗ったりですね。また、毎週のように北海道の牧場に行っています。最近テレビや新聞は全然見てないですね。北海道に行くときなんかもホテルを取るんですけど、夜は牧場の方々と一緒に食事をしたりしますし、翌朝も早いですからね。ホテルでは本当に寝るだけです。こちらでも牧場で調教をつけるとなれば、一時間以上かけて行くところもあるので出発も早くなりますし。

 

Q:夜は何時ごろ寝ているんですか?

小:生活サイクルが一気に変わったので、夜あんまり寝付けないんですよ。なんか疲れすぎて寝れないみたいな感じですね。

 

Q:大変ですね。大丈夫ですか?

小:疲れてますね。でも、やらなければならないことが目の前にあると、案外なんとかなるもんだな、と実感してます。怠けてはいられない状況ですからね。

 

Q:お酒などは飲まれます?

小:飲みますね。でも最近弱いです。ビール一本でもうフラフラ。

 

Q:一人で飲むのと皆で飲むのではどうですか?

小:全然違いますね。一人で飲むときはあっという間に酔っちゃうんですけど、宴会なんかでは「こんなに飲んで大丈夫かな、俺」ってくらい飲んじゃいますね(笑)。

 

Q:合格してからは休みは取れたんですか?

小:土日は競馬場に行っているし、月曜日は牧場、それ以外はトレセンでの調教があるし。ずっとそのサイクルで動いていて休んでないですね。騎手の時は月曜日なんかはもう少し休めてたんですけど。

 

Q:長い休みなど取られたことはあるんですか?

小:騎手になってから長い休みを取ったのは怪我したとき位ですね。新婚旅行も行ってないですからね。

 

Q:ああそうか。騎手だと行けないですよね。

小:行けないです。ほんと旅行らしい旅行したことないなぁ。

 

Q:もし長い休みが取れたら何をしたいですか?

小:僕温泉が好きなんですよ。北海道とか行くと山奥とかにたくさんあるじゃないですか。ああいう誰も来ないような温泉につかって何も考えずにゆっくりしたいですね。

 

Q:いいですねぇ。ちょっと一杯お酒なんかも飲んだりして。

小:あと無人島なんかもいいかもしれないなぁ。

 

Q:さて、次はご家庭についてお伺いしたいのですが、ご結婚されてからはどのくらいになるんですか?

小:結構長いですね。21歳の時に結婚したので、もう17,8年くらいですかね。

 

Q:奥様の手料理で一番好きなものってなんですか?

小:う~ん、何かなぁ。妻の父親が漁師なんですよ。結構いい魚を送ってきてくれたりするので、やっぱり魚料理ですかね。

 

Q:どんな魚がおすすめですか?

小:う~ん、最近だとちょっと高いんですけど、キンキの煮付けとか最高ですね。

 

Q:キンキですか。食べたことあったかなぁ。

小:うんまいですよ、あれは。ほんと高いんですけど。時価とか書いてありますからね。

 

Q:先ほど好きな場所として挙がっていた北海道とか九州も魚はおいしいですもんね。

小:小倉なんか寒い時期に競馬やるんで一番いい時期なんですよね。去年は(中京の代替で)久しぶりに12月に小倉がありましたけど最高だったと思いますよ。行きたかったなぁ。

 

Q:奥様との馴初めとか教えていただけますか?

小:函館で根本調教師が良く行く喫茶店があったんですよね。彼女も会社の昼休みなんかにそこによく来ていたようで、そこで知り合いました。

 

Q:出会ってからどの位で結婚されたんですか?

小:一年とちょっと位だったかな。

 

Q:当時は携帯とかなかったと思いますけど、遠距離での連絡とかはどうされてたんですか?

小:いやぁ、それはノーコメントで(笑)。そういえば携帯なかったなぁ。

 

(この後黎明期の馬鹿でかい携帯電話について話が盛り上がる。)

 

Q:次の質問は今までにした最大の夫婦喧嘩はというものなんですが。

小:最大っていうか。喧嘩はしょっちゅうです。大体の原因は僕みたいですけど(笑)。

 

Q:あ、そうなんですか?喧嘩になった時ってどうやっておさめてるんですか?

小:僕が逃げる。逃げてしばらくするとおさまってる、って感じです(笑)。

 

Q:なるほど。逃げた方がいいですか。参考にしようかなぁ。

小:逃げた方がいいですよ。奥さんって強いですから(笑)。

 

Q:次なんですが、イヌ派ですか?ネコ派ですか?という質問です。

小:イヌですね。ネコはひっかくじゃないですか。

 

Q:ご自宅ではイヌを飼われてたりするんですか?

小:飼ってないです。騎手という職業柄もあるんですけど、今まで骨折した馬とかを沢山見てきているじゃないですか。だから死なれてしまった時の悲しさがありますよね。そういう死ぬところを見たくないんですよね。子供たちは「飼いたい」っていうんですけどね。

Q:なるほど。たしかにそういうことはあるかもしれないですね。

 

Q:それでは最後の質問です。目玉焼きには何をかけますか?というものなんですが。

小:醤油ですね。

 

Q:醤油ですよねぇ。インタビューの内容を打ち合わせてた時「目玉焼きにはケチャップだ」と言い張る後輩がいまして、じゃあ皆さんに聞いてみようということになったんですけど、ケチャップはかけないですよねぇ?

小:かけないですね。あ、でも競馬学校の時、ごはんに生卵を乗せてその上にソースをかけるってやつはいましたよ。「おかしいだろ、それは」って言ったら「何が、おかしいんじゃっ!!」って言ってましたけど。

 

Q:ああ、それも珍しいですねぇ。目玉焼きにソースの人は結構いるみたいですけど。

小:目玉焼きはわかるけど生卵ですからねぇ。

 

 

 

 

当初、30分程度で終える予定だったインタビュー。予定時間を大幅に超えてしまったのですが、競馬の話からプライベートに至るまで誠実に答えてくださいました。本当にありがとうございました。

 

3月から開業する小野次郎厩舎。騎手時代の同騎手のようないぶし銀の名馬の登場を期待したいところです。

 

皆様の熱い声援をよろしくお願いいたします。