【栗東TC】白井寿昭厩舎応援ツアー&天皇賞(秋)調教見学
こんにちは!
すっかり葉も色づいて、食べ物が美味しい季節となりました。みなさまどうお過ごしですか?
天高く馬肥ゆる秋、という言葉もあるように、栗東トレセンのサラブレッド達も日々よく食べ、元気いっぱい調教に励んでおります
さて、栗東トレセンではGⅠ競走のある週の水曜日の調教、いわゆる「追い切り日」に競馬ファンの皆様をご招待する調教見学ツアーを行っています
中でも今回は、来年で引退される白井寿昭調教師にスポットを当て、「白井寿昭厩舎応援ツアー&天皇賞(秋)調教見学」と題しまして、調教見学に加え、数々の名馬を輩出した白井厩舎を訪問するといった豪華な内容でお送りしました
それではさっそく、リポートしていきましょう
まずは調教の様子を見るため左回り調教スタンドへ
今の時期は朝の6時に馬場が開場されるので、6時になる少し前から続々と馬達が馬場内へと入場していきます
平地コースの場合、木片を敷材としたCWコースを使って調教する馬が多いですが、この日もエピファネイアをはじめ、デニムアンドルビーやトーセンジョーダン、サトノノブレス、ラブイズブーシェと多くの天皇賞(秋)出走予定馬や、昨年のマイルチャンピオンシップを勝ったトーセンラーの姿を捉えることができました
しかし、目の前を一瞬で駆け抜けるサラブレッドを双眼鏡で追うのは本当に難しい・・・
毎日そんな調教を見ている調教師の方や記者の方の大変さを参加者のみなさまにもわかっていただけたかと思います
さらに、調教見学の時間には2人のゲストジョッキーに登場していただきました
まず登場したのは浜中俊騎手
つい先日の秋華賞ではショウナンパンドラで見事勝利をおさめました
騎乗した際とても調子が良くこれはいけるんじゃないかという予感があったとか
また、今週末の天皇賞(秋)に向けては騎乗予定のデニムアンドルビーに対して「馬自体も仕上がり調子よくきているので勝てるように乗りたい。できれば内枠、良馬場だといい笑」と意気込みを聞かせていただきました
また、実際にジョッキーを目の前にして参加者の方から「レース時のコース取りはどう判断するのですか?」という質問も。
それに対し、「レース前に自分の位置取りも考えるし、また、他の騎手の乗り方や馬の動き方を予測している。レース中もその都度、臨機応変に考えるが、そうすることで一瞬遅れてしまうので、本当は本能的にレースの位置取りを考えられるのが理想。」とお答えをいただきました
直接頂いた答えに質問された方も感激されていました
続いてやって来たのは岩田康誠騎手です
先日の秋華賞ではヌーヴォレコルト、菊花賞ではヴォルシェ―ブとのコンビで挑みました
秋華賞については「馬の調子も良かったがゲートから出るとき流れに乗れなかった」とのコメント
強豪馬が集まるGⅠ競走ではちょっとしたことがレースの勝敗を分けるというプロの世界の雰囲気が伝わってきました・・・
「久しぶりに乗るのでまだわからないところもあるが、調子は良くなってきている。東京2000mへの相性もいいと思う。あとは、どれだけ他の強いメンバーと戦っていけるかどうかです。」と期待膨らむコメント
調教見学を後にし、坂路スタンドから坂路コースの見学、そして、調教師や報道関係者などたくさんの競馬関係者が業務を行う右廻りスタンドを経て、有名馬ゼッケン等が展示されている広報コーナー見学を行いました。
バスで移動する途中、車窓からはGⅠ馬のニホンピロアワーズや、移動する友道康夫調教師、取材に来ていた佐藤哲三元騎手や細江純子元騎手など多くの競馬サークルに関わる方の姿を見ることができました。
このような調教時間中の騎手や調教師のトレセン内での普段の姿が見られるのがこの施設見学の醍醐味です
そしてこの後は本日のメインイベントである白井厩舎訪問に向かいます
白井寿昭調教師は立命館大学を卒業後、1968年(昭和43年)に栗東・上田武司厩舎所属の厩務員として競馬のキャリアをスタート。1973年には同厩舎の調教助手となりご経験を積まれた後、1978年に調教師免許を取得。翌年にご自身の厩舎を開業されました。
現在までにJRA通算772勝を挙げられ、見事ダービーを制したスペシャルウィーク、オークス馬ダンスパートナー、芝・ダート両方で活躍したアグネスデジタルやメイショウボーラー、フサイチパンドラ等数々の名馬を輩出した日本を代表する調教師のお一人です
まずはそんな白井調教師へのインタビューです
白井調教師が競馬の世界を目指された理由をお伺いしたところ、「小さいころテレビ中継でみた有馬記念に魅せられ、そこから憧れるようになった」とのこと
白井調教師はご家族等に競馬関係者がおらず、また大学をご卒業後に厩務員になられたという当時としては異色のキャリアをお持ちなので、苦労した点もあったのでは、という質問には
「中学時代に騎手になりたいと思ったこともあるほど競馬にのめりこんだが、一人息子だったこともあり父親から反対された。しかし、どうしても競馬に携わりたいという思いが強く、大学3・4年生で単身北海道の牧場にアルバイトに行き、そこで馬の血統を勉強しながら知識を深め、この世界で働きたいと思うようになり、厩務員試験を受けた。」
とのだとか。その試験のときにはなんと、試験官に対して「絶対調教師になりたい!」という夢を語ったそうです
当時は厩務員から調教師になる事がまだまだ一般的ではなかった時代・・・
試験官も「そんなこと言ったやつは初めてだ!」と驚いたそうです笑
本当に競馬が好きで、多くの努力を重ねてこれほどまでのキャリアを積み上げてこられたということが深く伝わってきます
また、皆さん気になる、いい馬の見分け方についてもお聞きしました
白井調教師曰く、馬体重の増減や調教タイム、パドックでの馬のそぶりが重要とのこと。
馬体重の増減は調子が如実に現れるからひどく増えたり減ったりする馬は何かあるし、また調教で最初調子よく走っていても終い1ハロンのタイムが遅い馬はまだ仕上がっていないと思う、とアドバイスいただきました
次に参加者の皆さんからも質問の多かった過去の管理馬について伺おうとすると・・・
なんと
この方々は
左から武豊騎手、福永祐一騎手、四位洋文騎手が飛び入りゲストとして来てくださいました
日本のトップジョッキーが勢ぞろいした姿はまさに圧巻の一言
武豊騎手はスペシャルウィークやダンスパートナーで、四位騎手も同じくダンスパートナーやアグネスデジタルで、そして福永騎手はフサイチパンドラやメイショウボーラーでそれぞれGⅠ競走を勝たれているということで、白井調教師とともに4人で当時のお話を伺います
スペシャルウィークに関して白井調教師は生まれた直後に見て、この馬は走るな!と感じたのだとか。
武豊騎手はスペシャルウィークで初めて日本ダービーを勝ったこともあり、思い入れは強く、その前の皐月賞で少しよれはしたがそれは馬場状態が悪かったからで、ダービーは取れるという自信がもともとあったとのこと。また、武豊騎手が日本ダービーでうっかりゴール直前にムチを落としてしまったという話は有名ですが、その時白井調教師はゴール直前でとても興奮していて、武騎手がムチを落としたことなんて全く気づかなかったのだとか!
ホースマンにとって日本ダービーを勝つことがいかに名誉あるレースか伝わってくるエピソードです
また、福永騎手に芝・ダートともに活躍したメイショウボーラーについて伺うと、「芝からダートの転向の際、芝であれだけ走れていた馬なのでダート挑戦は絶対良いと思った。」とおっしゃっていました。
さらに、福永騎手はアグネスデジタルのデビュー戦にも騎乗したとのことで、そのまま四位騎手、白井調教師を加えアグネスデジタルの思い出話へ
四位騎手曰く、なんでもアグネスデジタルは本当におとなしい馬で騎乗するとちゃんと走るのかと心配になるほど穏やかな気性だったそうです
そのため武豊騎手、福永騎手、四位騎手が3人とも参加された2001年の香港遠征の際、アグネスデジタルがリードホースのように振舞っていたのだとか
また「お前がスペシャルウィークの調教に乗った時、走りがとても良く、『この馬にずっと乗りたい!』と言ったよな~」と白井調教師が武騎手に話しかけたり、「僕そのとき併せの馬に乗ってたんですよ」と福永騎手が話に入るなど、調教師と騎手たちが楽しげに話す様子に、参加者のみなさん感激されていました
そんな貴重なお話を伺ったあとは、白井調教師自ら一頭一頭管理馬の紹介をしてくださいました
こちらの洗い場にいるのはメイショウボーラーの仔、ヴィンテージイヤーです
普段はやんちゃだそうですが、本日は気持ちよさそうに体を洗ってもらっていました
また、直接餌をあげるなど、サラブレッドとふれあう場面も
現役の競走馬や初めて入る厩舎内に、参加者の皆さんも興味深々で、馬の飲んでいる水の量や寝藁の質、食べ物の好き嫌いが書いてあるホワイトボードについてなど多くのことを質問されていました
そして白井調教師よりみなさんに
「競馬には色々な楽しみ方があるので、それぞれの楽しみ方を見つけて、これからも競馬に興味を持ち続けてもらいたい。また、私も引退はするが、今後も競馬に携わっていきたい。」
とメッセージを頂きました
最後に集合写真です皆さん笑顔でパシャリ
今回参加していただいたファンの皆さんからは、「白井調教師の大ファンになりました!」という声や、「とても気さくに厩舎のことをお話いただけて楽しかった」という声が聞かれました
今回大勢の騎手の方が駆けつけてくださったり、また厩舎内を気さくに案内していただけたりしたことから、白井調教師のお人柄を感じることができたのではないでしょうか
来年の2月にご定年となりますが、今後も競馬に携わっていきたいというお言葉もあり、これからのご活躍が今から楽しみです
これにて、ツアーのリポートは終了です
秋のGⅠは早くも中盤にさしかかりました
天皇賞(秋)の後もエリザベス女王杯、マイルチャンピオンシップ、ジャパンカップなど見逃せないレースが目白押しです
ぜひぜひ競馬場に足を運んで頂いて、その感動を生で味わっていただきたいと思います