育成馬ブログ(生産編⑤)

●交配に向けて繁殖牝馬の冬期の管理

 年が明け、いよいよ繁殖シーズンも近づいてまいりました。今回は当場で

行っている繁殖牝馬の冬期の管理についてご紹介いたします。

 

繁殖牝馬の管理における冬期のポイント

 JRA日高育成牧場では例年3月中旬より交配(種付)を開始していますが、寒

い北海道で繁殖牝馬を管理する上で気を付けているポイントは下記の3点です。

① 12月20日冬至)からライトコントロール開始

② 最高気温が2桁まで上がらなくなったら馬服着用開始

③ 積雪が概ね30㎝以上になったら放牧地内に乾草ロールを設置

 

○ライトコントロール

 ウマは日長時間が長くなることによって発情期が出現する「長日性季節繁殖

動物」であり、日照時間の短い北国において3月中旬から交配を開始するために

は馬房内に電球を点灯して人為的に明るい時間を延長するライトコントロール

が必要不可欠となります。過去に我々が空胎馬に対して行った調査によると、

12月中旬から明期14.5時間、暗期9.5時間のライトコントロールを開始する

と、2月下旬までに70%の、3月下旬までに90%の牝馬にシーズン初回排卵

認められることがわかりました。このことから、現在は12月20日冬至)前後

から昼放牧に切り替え、朝は5時半から夜は20時まで馬房内の電球が点灯する

ようにタイマーを設定し、ライトコントロールを行っています。妊娠馬に対し

ても同じくライトコントロールを実施することで妊娠期間の短縮および分娩後

の卵巣静止を予防する効果があると言われているため、同時にライトコント

ロールを開始しています。

Photo

12月20日冬至)からライトコントロール開始

 

○馬服の着用

 さらに、ウマは日長時間だけでなく気温の上昇によっても季節の変化を感じ

ていると言われているため、冬期は馬服の着用を行っています。着用する馬服

の種類にもよりますが、馬服を着用した状態で最高気温が概ね2桁(10℃)以

上になると汗をかき始めるため、汗が乾く際の気化熱で馬体がかえって冷えて

しまう恐れがあるので、最高気温が2桁まで上がらなくなったタイミングで馬服

を着用するようにしています。なお、JRA日高育成牧場では、防水・防風効果

に優れ、放牧に適したニュージーランドラグというタイプの馬服を着用してい

ます。

 

○放牧地内に乾草ロールを設置

 積雪がまだ少ない状態では馬は雪の下に生えている青草を掘って食べます

が、積雪が概ね30cm以上になると雪を掘るのが困難となってしまうため、乾草

ロールを放牧地内に設置します。これによってボディコンディションスコアの

低下を防ぐのと同時に、繊維分を補給することで疝痛の予防にもなります。な

お、かつては当場でも鉄製の草架を使用していましたが、事故防止および呼吸

器への影響(馬が上を向いた状態だと気管に埃が入りやすい)から現在は草架

を使用していません。

Photo_2

馬服の着用と乾草ロールの設置

 

 繁殖シーズンが始まる前に交配に向けてしっかりと準備しておくことが重要

だと考えています。今回の記事が繁殖牝馬の管理に少しでもお役に立てば幸い

です。