生産育成研究に関する発表のお知らせ (於:競走馬に関する調査研究発表会・ウマ科学会学術集会)(事務局)

JRA日高・宮崎育成牧場および馬事部 生産育成対策室では、JRA育成馬を生産育成する過程で得られた技術・研究実績などを様々な形で普及しています。

次週、その研究内容の一部を「第53回競走馬に関する調査研究発表会」および「日本ウマ科学会第24回学術集会」にて発表いたしますので、お知らせいたします。

開催概要は下記となっておりますので、ご興味がありましたら是非ご聴講頂ければと思います。

それでは、今後もJRA育成業務へのご理解・ご協力宜しくお願い致します。

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【第53回競走馬に関する調査研究発表会】

◆日時:11月28日(月) 10時~17時

◆場所:東京大学 農学部 弥生講堂

◆発表内容

①演題 No.6 アスタキサンチン含有サプリメントの投与による競走馬の労作性横紋筋融解症(すくみ)の発症予防効果について (大村 昂也:JRA日高)

②演題 No.10 蹄骨掌縁切痕と縫際点部蟻洞の関連性 (大塚 尚人:JRA日高)

③演題No.20 幼駒における近位種子骨々折の発症に関する調査(遠藤 祥郎:JRA日高)

④演題No.22 厳寒期における当歳馬の放牧管理に関する検討 (土屋 武:JRA 馬事部)

⑤演題 No.23 サラブレッドにおける分娩後初回発情交配の生産率に及ぼす影響 (佐藤 文夫:JRA日高)

⑥演題 No.24 JRA日高育成牧場におけるロドコッカス・エクイ感染症の動態 (村瀬 晴崇:JRA日高)

○プログラムはこちらです(日本ウマ科学会HP)

 →53_kenkyuuhappyoukai.pdfをダウンロード

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【日本ウマ科学会 第24回学術集会】

◆日時:11月28日(月) 14時~17時  

11月29日(火) 9時~17時30分

◆場所:東京大学 農学部 弥生講堂および3号館教授会室

◆発表内容

11月28日(月)午後

・演題 No.10 夏季の放牧地で発生するスラフラミン中毒によるウマの流涎症について (中井 健司:JRA日高)

11月29日(火)午前

・演題 No.26 気候の異なる条件下で育成されたサラブレッド種の発育に関する研究 (水上 寛健ほか:東京農工大学JRA宮崎育成牧場)

○プログラムはこちらです(日本ウマ科学会HP)

 →24_umakagakkai.pdfをダウンロード

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冬到来!(日高)

日高育成牧場のある浦河では10月末頃から“雪虫”が飛び交い、さらに最低気温が氷点下になる日もあり、徐々に冬の気配が感じられていました。そして、11月15日にはついに初雪が降り、まさに冬到来となりました。野生のエゾ鹿達も繁殖期を終え、夏毛から冬毛へと衣替えを終え、越冬の準備を始めています。

 エゾ鹿達も夏毛(左)から冬毛(右)へと衣替えを終え、越冬の準備を始めています。

さて、3群に分けて騎乗馴致を進めてきたJRA育成馬ですが、各群とも順調に進んでいます。9月中旬から騎乗馴致を開始している1群の牡馬は、800m屋内トラック馬場での調教実施時には、1列縦隊で1周した後、手前を変えて二列縦隊でキャンターを2周、計2,400mのキャンターを行っています。また、1群の牡馬はBTCの1600mトラック馬場においても1周のキャンター調教を行っています。この広い調教コースでは、ある程度のスピードで(F23~20程度)まっすぐに走行することを馬に教える目的で調教を実施しています。

 

 1600mトラック馬場でキャンターを行う1群の牡馬

10月上旬から騎乗馴致を開始している2群の牝馬は、800m屋内トラック馬場での集団調教が可能な段階にまで進んでおり、リードホースを先頭に1列縦隊で1周した後、手前を変えてさらに1周、計1,600mのキャンターを行っています。一方、10月下旬から騎乗馴致を開始している牡と牝が混在する3群も騎乗に向けてドライビングを十分に行っています。

 騎乗前にドライビングを十分に行っている3群の馬。シャカラカベイビーの10(牝 父オレハマッテルゼ)

騎乗馴致を進めていくと、牝馬の中には牡馬と比較して騎乗に至るまでに順調さを欠く馬、例えば、腹帯を嫌う馬、ランジングレーンがお尻に触れることを嫌う馬、さらには騎乗されるのを嫌う馬なども認められます。これは、牝馬は牡馬と比較して繊細であることが原因であると考えられます。このような牝馬に限らず騎乗馴致を行う際には、馬に理解させることを第一に考え、その理解を日々積み重ねていくように進めていかなければなりません。騎乗馴致時にラウンドペンの中で馬が反転するなどの行動は、馴致を行っている者が無意識のうちに馬に対して反転させる“扶助”を出していると考えるべきであり、そうなってしまった場合には、感情的になって馬と戦わずに、前のステージに戻って再度理解させるように対応しなければなりません。この騎乗馴致の段階で馬に理解させることに失敗してしまうと、競馬のステージにおいても騎乗者の扶助を理解することなく、ただ疾走するだけか、あるいは“あきらめ”を身に付けた馬になってしまう可能性が高くなるので、細心の注意を払って騎乗馴致を進めています。

話は変わりますが、先日、800m屋内トラック馬場に珍しいお客さんが訪れました。今までにも常連さんの“キタキツネ”や、調教中に先頭を走行し“ラビット”としてスローペースを演出していた“エゾユキウサギ”などがやってきましたが、今回のお客さんは“エゾフクロウ”です。番兵のごとく馬場の屋根裏に鎮座し、微動だにせず調教を見守っていました。夜行性のために日中はほとんど寝ているらしいのですが、欠伸をしている最中にコースを馬が通ると、片目をつむりながら首を回して馬を追いかける姿が非常に愛らしく映りました。フクロウは古来から世界各国でさまざまなものの象徴とされてきました。日本でも頭がクルクル回ることから“知恵の神”として扱われていたり、また“不苦労”の字から “幸福を呼ぶ”鳥といわれてきました。今回の愛らしいフクロウも、馬達に幸福をもたらしてくれる守護神であることを願っています。

 

 今回の来場者は馬達の守護神“エゾフクロウ”でした。

活躍馬情報(事務局)

先週の東京競馬においてJRA育成馬タイセイスティング号が「からまつ賞(2歳500万下)」に優勝致しました。同馬は宮崎育成牧場で育成調教され、本年のブリーズアップセールにて取引された馬です。

なお、次走は12月14日に川崎競馬場で開催されます「全日本2歳優駿(G1)」に出走予定です。

また、同馬の優勝により、2011年JRAブリーズアップセールで取引された育成馬は、11頭勝ちあがり(内新馬戦優勝5頭)、延べ15勝(内オープン競走3レース)となりました。

それでは、今後もJRA育成馬の活躍にご期待頂ければ幸いです!

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【11月26日(土) 5回東京競馬7日目 9R】  

からまつ賞(ダート:1600m)

タイセイスティング号(ミラクルケープの09) 牡

父:ゴールドアリュール  厩舎:新開 幸一(美浦

  

                       ※JBISサーチ提供

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JRAホームブレッド(生産馬)初勝利 (事務局)

先週の5回中山競馬第3レースにおいて、マロンクン号(美浦・牧 光二厩舎)が1着となり、JRAホームブレッド(生産馬)が中央競馬初勝利を挙げましたのでお知らせします。

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【12月3日(土) 5回中山競馬1日目 3R】

 2歳未勝利戦(芝:1200m)

 

     マロンクン号(ワンモアベイビーの09)  牡

   父:デビッドジュニア  厩舎:牧 光二(美浦

        

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 「JRAホームブレッド(JRA Homebred)」とは、JRA育成馬のうち、JRA自らが生産した馬の名称です。同馬はJRA日高育成牧場にて生産・育成され、本年4月のJRAブリーズアップセールに上場・売却されたJRAホームブレッド初年度産駒の1頭です。

JRAでは、わが国の生産育成分野のレベルアップに資することを目的として、これらの馬を活用し、「母馬のお腹の中から競走馬までの一貫した調査研究や技術開発」を行い、その成果の普及・啓発に取り組んでいます

JRAホームブレッドやその母馬を用いた生産育成業務の成果については、JRAホームページ内のJRA育成馬サイト「JRA育成馬を用いた生産育成研究業務」(リンク: http://www.jra.go.jp/training/research.html)で詳細を紹介しております。

 

 ・ 詳細はこちらです(JBISサーチ)

  → http://www.jbis.or.jp/breeder/9000501300/achievement/

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なお、マロンクン号は、本年のブリーズアップセールでの新たな取り組みである “ファイナルステージ” 売却馬の初勝利ともなりました。

  •  ファイナルステージとは:セール当日落札されなかった上場馬を、馬主の皆様に早期(セール翌日)にご購買いただくための取り組みです。詳細は下記リンクをご覧下さい。

 ・リンク:http://blog.jra.jp/ikusei/2011/04/post-1c4e.html

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季節の変わり目(宮﨑)

師走に入り、ここ南国宮崎も肌寒い日が増えてきました。

宮崎育成牧場で、最も季節の移り変わりを実感するのは、育成馬達の放牧場所・や放牧頭数などの放牧形態の切り替えではないでしょうか。

入厩時より実施してきた夜間放牧も調教がすすむにつれ、順次グループ毎に昼間放牧に切り替えてきました。

現在早期に入厩し先に馴致を開始した第1群は、駆歩で500mの内馬場を2周した後、1600m馬場で22秒/ハロン程度のスピードで2000m、合計3000mの駆歩調教を実施しています。9月に入厩した第2群も1600m馬場に入り本格的な調教を開始しています。

   

【写真1】 初めての1600馬場での速歩調教

騎乗者の表情には緊張感に加えて、無事に本馬場入りした喜びも漂います。

  

夜間から昼間の放牧への変化に加えて、運動量も個体毎の管理を行うために、単独のパドック放牧へと管理形態が大きく変化しています。

  

【写真2】 単独のパドックに放牧されたロマンスビコーの10(父シンボリクリスエス

パドックにはイタリアンライグラスが青々と茂り、喜び、リラックスした馬の様子がうかがえます。また、宮崎育成牧場では、冬場の被毛管理としてクリッピングを実施しています。

  

これまでは、約16時間広い放牧地で複数頭で自由に運動していた訳ですが、これからは単独で4時間程度の放牧に運動の質・量共に管理されることになります。朝一番に見る馬の顔も大きな変化が見られます。夜間放牧時は、心地よい疲労感を漂わせていた朝の表情は一変し早く外に出て運動したいと眼を輝かせて訴えています。放牧形態など環境の変化に伴う心の変化をストレスとして溜め込むのではなく、走りたい気持ちに変換し調教で十分に発散できるよう我々も工夫を重ねていく所存です。

また、宮崎育成牧場では毎週土曜日に場外発売所や公園にお越しくださったお客様に調教の様子を公開しています。

当日の調教メニュー、取り組んでいる課題、週替わりの育成馬紹介などパンフレットを作成配布し、番号ゼッケンをつけた育成馬達をご覧になっていただいております。宮崎にお越しの際には是非スケジュールに加えてみてください。

   

【写真3】 調教公開にお越しいただいたお客様の前で番号ゼッケンを装着し一列で駆歩調教を披露する育成馬達

前から⑯クイーンズバンダムの10(父ザール)、⑮フラワーブリーズの10(父ブラックタイド)、⑬フェアリーステップの10(父ネオユニヴァース)