活躍馬情報(事務局)

先週の阪神競馬においてJRA育成馬ダンツミュータント号が「メイクデビュー阪神新馬戦)」に優勝致しました。同馬は日高育成牧場で育成調教され、本年のブリーズアップセールにて取引された馬です。

また、同馬の優勝により、2011 JRAブリーズアップセールで取引された育成馬は、13頭勝ちあがり(新馬戦優勝6頭含む)、延べ17勝(内オープン競走3勝、500万特別1勝含む)となりました。

それでは、今後もJRA育成馬の活躍にご期待頂ければ幸いです!

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【12月17日(土) 6回阪神競馬5日目 6R】  

メイクデビュー阪神(芝:1400m)

ダンツミュータント号(ウメノローマンの09) 牡

父:マイネルラヴ  厩舎:本田 優 (栗東)  

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活躍馬情報(事務局)

先週の小倉競馬においてJRA育成馬キボウダクリチャン号が「2歳未勝利戦」に優勝致しました。同馬は日高育成牧場で育成調教され、本年のブリーズアップセールにて取引された馬です。

また、同馬の優勝により、2011 JRAブリーズアップセールで取引された育成馬は、2歳終了時点において14頭勝ちあがり(新馬戦優勝6頭含む)、延べ18勝(内オープン競走3勝、500万特別1勝含む)となりました。

それでは、来年もJRA育成馬の活躍にご期待頂ければ幸いです!

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【12月24日(土) 5回小倉競馬9日目 3R】  

2歳未勝利戦(芝:1,200m)

キボウダクリチャン号(ウッドフェアリーの09) 牝

父:チーフベアハート  厩舎:高市 圭二 (美浦

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厳冬期の管理と講習会(生産)

今年も残すところあとわずかですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。今年は例年と比較し暖かく、「今年は雪が降るのが遅い」と感じておりましたが(写真1)、心配しなくても冬はちゃんと来るものですね。たった一日で草原が雪景色に変わってしまいました(写真2)。

  

  

  

【写真1】12月第2週の放牧地の様子。まだ雪がなく、当歳馬たちは青草を食べています。

  

  

  

【写真2】12月第3週の放牧地の様子(写真1と同じ放牧地です)。こうなると青草を食べられませんので、放牧地にルーサン乾草を撒くなど工夫しています。

  

  

秋まで放牧地の青草を主食とし、昼夜放牧時には1日に14~20時間は採食していた当歳馬たちにとって、放牧地が雪で覆われる北海道の冬は、飼養管理方法の変更を余儀なくされ、一般的には昼夜放牧から昼放牧へと切り替える牧場がほとんどだと思います。青草の採食の問題のほか、氷点下を下回る気温の低下やそれに伴う放牧地面の凍結によって、放牧地での自発的な運動量も減少します。成長期である当歳馬たちにとって、この環境の変化は大きな意味を持ち、冬期には成長が停滞することが知られており、この時期の管理方法は中期育成期における大きな課題となっています。

    

一昨年のJRAホームブレッド第1世代(父デビットジュニア)は、“自然な状態での管理”というテーマで、厳冬期も全頭昼夜放牧を実施しました。その結果、冬毛が非常に伸び、完全に換毛したのは1歳の6月ごろであったために、外貌上の面だけを考えると、特に7月のセリへの上場を目標とする場合には、厳冬期に昼夜放牧を実施すると不利な面があると思われました。とはいえ、9月に入り騎乗馴致を行う頃には、セリで購買した他の馬との違いもなくなり、厳冬期の昼夜放牧のデメリットは特に感じられない状況でした。さらに、競走期に関して言えば、先日このブログでもご紹介した通り、マロンクンJRAホームブレッドとして中央競馬初勝利をあげています。

    

昨年の第2世代(父ケイムホーム)は、11月末から「昼夜放牧群(22時間放牧群)」と「昼放牧群(7時間放牧+ウォーキングマシンによる運動群)」とに分け、臀部脂肪厚、屈腱断面積、成長に関わるホルモンなどの変化について比較検討を行いました。その結果、当たり前ですが冬毛の多寡など様々な違いが認められました。特に興味深かったのは、甲状腺ホルモン・プロラクチンなどのさまざまな成長に関わるホルモン動態を検討したところ、いずれも「昼夜放牧群」と比較して「昼放牧+WM群」で高い活性を示したことでした。このホルモン動態の変化が生理的にどのような影響を及ぼすのか、また競走能力にどのような影響を与えるものなのかなどについて、まだ不明なことだらけですので、今年の第3世代(父アルデバラン)も研究を継続し、「昼夜放牧群」と「昼放牧+WM群」の2群に分けて管理しています。ホルモンについては民間牧場にもご協力いただいて例数を増やして詳細に解析していく予定です。

  

 昨年の研究結果については、「JRA育成馬日誌」の下記の記事をご覧下さい。

   

  

【参考:JRA育成馬日誌】

    

  • 「冬季の当歳馬の管理」

  http://blog.jra.jp/ikusei/2011/01/post-5777.html

  

  • 「昼夜放牧と昼放牧(ウォーキング・マシン併用)、

厳冬期はどちらがBetter?①」

  http://blog.jra.jp/ikusei/2011/02/better-1b3c.html

  

  • 「昼夜放牧と昼放牧(ウォーキング・マシン併用)、

厳冬期はどちらがBetter?②」

  http://blog.jra.jp/ikusei/2011/02/better-c575.html

  

  • 「昼夜放牧と昼放牧(ウォーキング・マシン併用)、

厳冬期はどちらがBetter?③」

  http://blog.jra.jp/ikusei/2011/03/better-ff0c-1.html

 

  

 

 さて、前号でもお知らせした通り、この生産地の“シーズン・オフ”を利用して、JRAでは様々な講習会を実施しました。写真はその中の一つ、12月16日に日高育成牧場にて行われた「日高女性軽種馬ネットワーク(馬女(まじょ)ネット)軽種馬生産技術研修会」の様子です(写真3)。馬女(まじょ)ネット(代表:高村洋子さん)とは、生産牧場の“女性”が集まり年に3~4回技術、経営研修等勉強会を主に活動している団体です。今回は、強い馬づくりのための生産育成技術講座の内容をアレンジし、「子馬の肢軸異常・クラブフット調査(講師:佐藤文夫・日高育成牧場)」「馬の皮膚病とその対策(講師:遠藤祥郎・日高育成牧場)」について講習会を実施しました。馬女(まじょ)ネットの活動について興味のある方、入会希望は、℡0146-42-1489(日高農業改良普及センター:田所氏)までお願いします。

    

 

  

  

【写真3】馬女(まじょ)ネット講習会の様子

  

  

 皮膚病の講習では、JRAが行った過去の調査・研究や、海外の文献などから、細菌が原因の皮膚病と真菌が原因の皮膚病の見分け方(写真4)や、皮膚病の種類毎に効果がある消毒薬の種類などを紹介しました。皮膚病は、それ自体が馬の生命に関わることは少なく、今まであまり講習会などが行われてこなかった分野で、正直なところ講演会の前までは「果たして本当にニーズがあるのだろうか」と疑問を抱いておりました。しかし、「馬をお客様に見せて売る」ことを仕事としている生産牧場や育成牧場の関係者にとって、商品である馬の価値を高めるために、皮膚病の管理は重要で非常に気を使っていることがわかりました。

  

   

  

【写真4】「馬の皮膚病とその対策」のスライドの一部。皮膚病の見分け方などについてお話しました

   

  

 JRA日高育成牧場では、こうした皆様のニーズに少しでもお応えできるよう、様々な調査・研究に取り組んでいきたいと考えております。今後も、我々の活動にご注目していただけましたら幸いです。

全ての道はローマに通ず(日高)

新年あけましておめでとうございます。昨年に引き続き、本年もJRA育成馬日誌をよろしくお願いいたします。日高育成牧場では、浦河町乗馬クラブやポニー少年団の子供たちとともに、新年恒例の騎馬参拝で2012年の幕が上がりました。騎馬参拝を行った西舎神社で、本年の人馬の安全を祈念いたしました。

【写真1】本年も西舎神社にて人馬の安全を祈念いたしました

昨年末の北陸や北日本を中心に発達した強い寒気の影響により日高育成牧場のある浦河でも大雪に見舞われ、一面銀世界に景色が変わり、厳冬期へと突入しました。例年、少量の積雪後に降雨によって地面がアイスバーンとなり、パドック放牧が困難になる心配をしているのですが、本年はこの大雪によって調教後や休日には安全にパドック放牧を実施できそうな状態になりました。しかし、正月にはみぞれ混じりの降雨に見舞われたり、春の雪解けまでは引き続き気がぬけない日々が続きます。

【写真2】 昨年末の寒波により一面銀世界へと景色が変わりました

このような厳しい寒さの中、JRA育成馬の調教は徐々に本格化してきました。1群の牡馬は800m屋内トラックでの2400m(1周+2周、ハロン22秒まで)の駆歩をベースに、週2回は800m屋内トラックで2周駆歩(ハロン22秒)を行った後に、坂路調教(1本、ハロン20秒)を実施しています。坂路を走行し終えた直後の息の入りを観察していると、1群の牡馬は余裕があるように映ってきました。一方、1群よりも3週間遅れで騎乗馴致を開始した2群の牝馬も同程度の調教メニューを消化していますが、こちらは調教メニューをこなすのが精一杯というような状態であり、あせらずじっくりと進めていきたいと思っています。この時期の2歳馬、特に牝馬においては体力的な過負荷以上に、精神面でのストレスのケアが非常に重要になります。そのために、当場では坂路調教の翌日にはリラックスさせることに主眼を置いた調教を行うことによって、調教に強弱、つまり“オン”と“オフ”のメリハリをつけるように心掛けています。

坂路調教(写真3:上)の翌日にはリラックスに主眼を置いた800 m屋内トラックでの調教(写真4:下)を実施し、“オン”と“オフ”のメリハリをつけるよう心掛けています。写真上の先頭はキセキスティールの10(牡 父:ケイムホーム)、写真下の先頭左の馬はベラミロードの10(牝 父:アドマイヤムーン)、先頭右の馬はカミモリローマンの10(牝 父:スウェプトオーヴァーボード

さて、ここからは昨年12月に行われました恒例の「BTC利用者との意見交換会」について触れてみたいと思います。今回は「競馬を見据えた育成調教・騎乗方法」というテーマに基づき、当場から「日高育成牧場における育成調教」および「育成馬の調教で意識している点」と題する話題提供の後、競馬で最大限の能力を発揮させるための体力面のみならず精神面のトレーニング方法について4名のパネリストの方々を中心に活発な意見交換が行われました。パネリストの皆さんは、自身の経験に基づき試行錯誤した中で、最善の方法を実践しておられる方々でした。一見すると個々の方法は全く異なっているようにも感じられることも少なくはなく、多種多様な意見が飛び交いました。しかしながら、「馬は常に精神および肉体面で健康でなければならない」という点は一致しており、パネリストの方々は馬を精神および肉体的に健康に維持するために、常に馬をよく観察し、馬を理解しようと心掛けているという共通項が浮かび上がってきました。また、その他にも、現状に満足することなく、強い馬づくりという目標に向け、最大限の努力をなされていることがひしひしと伝わってきました。今回の意見交換会を終えて、重要なことは「馬を観察し、馬を理解しようと心掛けること」であるということを確信いたしました。多種多様な考え方がある中にも、やはり「全ての道はローマに通ず」ということを強く感じさせられました。私自身、非常に刺激を受けるとともに、多くのヒントをいただくことができました。4名のパネリストの方々、および参加していただいた方々にはこの場をお借りして御礼申し上げます。

日高育成牧場でもしっかりと馬を観察し、育成調教を進めていきたいと考えています。また、そのなかで得られた知見を少しでも解りやすく、なるべく科学的な分析や根拠も加えてお伝えしていきたいと考えています。

【写真5】 例年同様に議論百出した「BTC利用者との意見交換会」の様子

今年もよろしくお願いします(宮崎)

皆様、新年あけましておめでとうございます。本年も「育成馬日誌」をよろしくお願いいたします。今年の冬は全国的に寒さが厳しいですが、南国・宮崎も例外ではありません。日中は10℃以上に気温が上昇する日もありますが、朝・夕の冷え込みはそれなりに厳しく、氷点下を記録する日も少なくありません。それでも放牧地には青々とした牧草が豊富にあり、JRA育成馬たちは調教後にフレッシュな牧草を食べることでリラックスしています。南九州地区は冬季の育成を行うのに好適な地であることは明らかです。

   

 

青々とした牧草を仲良く食べるスリリングヴィクトリーの10(写真左、牝、父:ダイワメジャー)とフラワーブリーズの10(写真右、牝、父:ブラックタイド)。日中の気温が上がらない日には、被毛を薄く管理するため馬服を着用して放牧します。

 

調教進度が進むにつれ徐々にテンションが高くなってきていた育成馬たち。年末年始は調教を行わずランジングと放牧のみで管理しました。現在は短期休養でリフレッシュした育成馬たちの本格的な調教を再開しており、1群の10頭は500m馬場で準備運動(速歩500m、駈歩1,000m)を行った後に1600m馬場で1,200mのキャンター 2本(ハロン22~18秒程度)のインターバルトレーニングを実施しています。また、1群より遅い時期に馴致を開始した2群は上記2本のキャンター調教(ハロン22~20秒程度)を行う日と、2,000m連続したキャンター1本(ハロン22秒程度)を行う日を組み合わせてスタミナ強化に努めています。

500m馬場で準備運動を行うデヴォアの10(写真右、牝、父:ハーツクライ)とスリリングヴィクトリーの10(写真左、牝、父:ダイワメジャー)。この時期になると準備運動から走りたい気持ちを剥き出しにする馬たち。我慢することを教える騎乗者も必死です。

 

 

1600m馬場で併走調教を行うレジェルマンの10(写真左、牡、父:バブルガムフェロー)とステファノティスの10(写真右、牡、父:ファンタスティックライト)。当初は横に来る他馬を嫌い、横の間隔を詰められなかった2頭ですが、現在は併走調教のベストパートナーになりました。

 

 

昨年末に、毎年恒例となっているV200値の測定(参照:育成馬日誌)を実施しました。V200はヒトでは個体ごとの有酸素運運動能力の科学的指標として確立していますが、馬の場合は速度の規定が難しいことや、馬の情動・騎乗者の体重・騎乗技術などが影響し、個体ごとの有酸素運動能力の指標としては精度の高い検査とはいえません。そのため今回も群れ全体の調教進度を判定し、その後の調教内容を考える参考として実施しました。今回測定したのは調教が進んでいる1群10頭です。これはV200値の測定が、1分あたり200拍の心拍数となる速度を求める検査なので、調教進度の進んでいる1群の馬のみを対象としました。

測定の結果は下表のとおりでした。過去の育成馬達との比較をみると、昨年売却した育成馬に比べてかなり低い値とはなりましたが、過去5年の平均に近似した値となりました。今後有酸素能力を高める調教を順調にこなし、スタミナをつけていくことで、過去の馬たちに追いつき追い越してほしいものです。次回の測定は1月末を予定しており、どのような結果になるか、今から楽しみです。

 

さて、最後に宮崎馬個別の近況を紹介したいと思います。今回はV200の測定値が最も高かった牡馬です。

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エムケイミラクルの10(父:ケイムホーム

牡・青鹿毛八戸市場購買馬(購買価格:840万円)

   

ケイムホームは2~3歳時に7,9,10Fで米GⅠに勝利。昨年の2歳新種牡馬ランキングで総合5位(地方1位)にランクインしています。本馬の兄には岩手で大活躍したマヨノエンゼルがいます。八戸市場で注目を集めた好馬体は健在で、美しく薄い皮膚と全身に纏った軟らかい筋肉が自慢です。軽い脚さばきと強い前進気勢を持っており、スタミナも豊富です。

 

単走調教を行うエムケイラクルの10。調教には常に前向きで、前を走る馬がいると耳を絞って追い抜こうとし、騎乗者の腕を痺れさせます。現在の馬体重は492Kgです。