育成馬ブログ 生産編⑧ 「その4」

子馬の引き方③

 

リードの装着

 

では、リード装着時期の目安は、いつでしょうか?

 

明確な答えはありませんが、子馬の頸部が安定する2~3ヵ月齢になるものと思われます。ただし、リードは止め具がない1本のロープであり、鼻革の下部で折り返して使用します。

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リードは止め具がない1本のロープ

(鼻革の下部で折り返して使用)

 

この方法は、リードの頭絡への装着部位に「遊び」ができるため、頭絡への過剰なプレッシャーを防止することができます。

また、子馬が突発的な動きをしても、頚へのダメージが最低限で済みます。さらに、たとえ放馬しても、リードが容易に外れることで、リードを肢で踏む、もしくは絡ませることによる転倒を防ぐことができます。

 

なお、リードの使用、不使用にかかわらず、子馬を力ずくで保持することは回避すべきです。前述したように、頚へのダメージが懸念されるとともに、頭絡への持続的なプレッシャーは、子馬の頭の中を混乱させる原因となり、理想とする「馬自身のバランスによる歩行」から乖離してしまうためです。

 

「どうしても子馬を放したくない」という気持ちは理解できますが、その気持ちが強すぎるあまり、子馬が窮屈そうに歩いている場合も少なくありません。

 

生後間もない子馬は、たとえ放れたとしても、必ず母馬について行きます。ですから、子馬が突発的な動きをした場合であっても、無理に保持しようとせずに、ルーズに持つ、もしくは放すことも一手かと思います。

 

生まれたばかりの子馬は、成馬と異なり、人間の指示に従って歩くことはできません。しかし、ほぼ毎日実施する引き馬によって、人をリーダーと認め、人馬の信頼関係が構築されていくのです。

 

人間の子供に対するしつけと同様、生まれた直後から、馬の性格に対する理想を描きながら日々接することが、ホースマンの役割であり、この仕事の醍醐味でもあるのではないでしょうか。

 

【ご意見・ご要望をお待ちしております】

JRA育成馬ブログをご愛読いただき誠にありがとうございます。当ブログに対するご意見・ご要望は下記メールあてにお寄せ下さい。皆様からいただきましたご意見は、JRA育成業務の貴重な資料として活用させていただきます。

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ブリーズアップセールが近付いてきました!(日高⑦)

関東地方では3月18日に春一番が吹きました。気象庁によると、これは1951年に統計を取り始めてから3番目に遅い記録だそうです。とはいえ3月下旬の日本列島に暦通り春が訪れていることは間違いなさそうです。日高育成牧場では、今でも雪が降ったりやんだりの繰り返しですが、晴天で気温の高い日には地表を覆っていた雪や氷塊が溶けて土の色が確認できるようになってきました。春の訪れを待っていた育成馬たちは、ここにきてぐんと良くなってきています。

 

 

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日高育成牧場を覆っていた雪も解けて春らしい景色になってきました。冬場は路盤が凍結するため使用できなくなる屋外1600m馬場も間もなく利用できそうです。

 

 

 

育成馬の近況

 JRA育成馬の調教は、来月のJRAブリーズアップセールに向けて負荷を強めつつ順調に進められています。調教のベースとなる800m屋内トラックでは基礎体力を養成するため2400m~3200m(F22~20秒)の調教を週4回実施し、火曜日と金曜日の週2回は800m屋内トラックで1200mのウォーミングアップをしたのち1000m屋内坂路コースで2本のキャンターを実施しています。屋内坂路コースでは1本目を3~4頭の縦列で56-54秒/3F程度、2本目を併走で50-48秒/3F程度のスピードを目安として調教しています。

 

 

 

調教撮影DVDの収録

 さて、日高育成牧場では3月19・20日の2日間、屋内坂路馬場で調教撮影を行いました。各馬の走行フォームを見ていただくことに主眼を置き、ラスト2ハロンを16秒-15秒で登坂する姿を撮影しました。この映像が収録されたDVDは最近の調教状況をご確認いただく目的で、ブリーズアップセールの購買登録をしていただきました馬主の方々に順次郵送させていただきます。また、JRA育成馬サイトJBISサーチ ライブ配信ページでも同内容の調教動画を4月上旬から配信します。育成馬たちが元気に走る姿を是非ご覧ください。

 

 

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撮影のために坂路上にはカメラや機材が設置されました。1本目の坂路調教で駆けあがってきた育成馬たちは、ゴール地点に普段見慣れないカメラがあるので驚いた様子でした。

 

 

 

BTC研修生による騎乗

 前回の日高ブログで競馬学校騎手課程生徒の騎乗研修について触れましたので、今回はBTC研修生の騎乗研修について少しご紹介します。現在、31期の研修生21名が3班に分かれてJRA育成馬の騎乗研修に来ています。9月末からのブレーキング(初期馴致)研修にも来ていたので、ブレーキングに携わった育成馬たちに久々に再会し騎乗していることになります。研修が始まるまで育成馬に携わったことのなかった21名の生徒達は、1年足らずの研修期間で大きく成長し力の強い育成馬たちを無難に乗りこなします。彼らの技術面の成長には毎度のことながら感心させられます。今後予定している育成馬展示会(4月14日:於 日高育成牧場)での騎乗に向けて、さらに技術を磨いてほしいです。

 

 

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800m屋内トラックで2列縦隊の調教を行う生徒(後列2騎)。騎乗しているのはフレンドリータッチの12(写真右から2番目、BU番号:6。牝、父:ボストンハーバー)とタケイチゼットの12(写真左端、BU番号:76。牝、父:アルデバラン)。

 

 

 

ブリーズアップセールに向けた準備

 1カ月後に迫ったブリーズアップセールに向けた準備が着々と進められています。その中でちょっと変わった準備(?)があるのでご紹介します。セール会場となる中山競馬場までは馬運車で約24時間の道のりで、途中フェリーにも乗るためできるだけ計画通りに輸送する必要があります。計画どおりに輸送できなくなる最大の原因は「馬が馬運車に乗らない」です。慣れない馬運車を物見して入らなかったり、中で大暴れしたり…。これらを避けるため事前に「馬運車の馴致」を行っています。当場で所有している馬運車に育成馬を乗せてみて、馬積み場や馬運車に慣れさせることと車内の環境に慣らして長時間輸送でのストレスを軽減することが主な目的です。今年の育成馬たちは比較的おとなしく、現在のところ問題のある馬はいません。無事に輸送するためにもスムーズな積み込みができることを祈っています。

 

 

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馬積み場で馴致を行う育成馬たち。実際の輸送ではもっと大きい馬運車に乗るため、この馬運車に乗れていれば安心です。

 

 

 

 今年のブリーズアップセールは4月29日(祝)に開催いたします。育成馬たちと向きあっていられる残り期間は約1カ月となりました。セールが終わってから後悔しないためにも、1日1日を大事にしていきたいと思います。

育成馬を知ろう会 in 宮崎(宮崎)(宮崎育成牧場 ⑦)

今回から人事異動に伴いまして宮崎育成牧場のブログを担当することとなりました。3月に日高から宮崎に転勤してまいりましたが、その気候の違いに驚いております。そろそろ雪解けを迎えている日高に対して、南国宮崎はすでに桜の開花が始まっており、お花見のピークも過ぎ去ろうとしています。このような気候に恵まれた宮崎育成牧場から育成馬22頭の近況や宮崎で開催されたイベントなどをお伝えしたいと思いますので、前任者同様よろしくお願いいたします。

 

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写真1.3月下旬に花見のピークを迎えた育成厩舎入口の桜。

 

 

育成馬の近況

 

 さて、宮崎育成牧場のJRA育成馬22頭の近況をお伝えいたします。宮崎育成牧場は、1000m屋内坂路などBTC調教施設を利用できる日高とは異なり、1600mのトラックダート馬場のみを使用しての調教となる点が大きく異なります。しかしながら、1600mもの広大な馬場を冬の凍結等考えずに自由に使用できるというのは、大きなメリットとも考えることができます。また、馬にとっては毎日同じ場所で同じ時間に調教が行われるということは、メンタル面を安定させるためには大きな利点となります。

 

 ウォーミングアップは1600m馬場の内馬場となる500mトラック馬場で、速歩を1周した後にハッキングを1周します。この内馬場でのウォーミングアップは、とにかくリラックスさせるよう心掛けています。また、1週間の調教の流れをパターン化することによって、馬が“オン”と“オフ”の切り替えを自らできるように取り組んでいます。休み明けの月曜日と強調教実施翌日の木曜日には、4~5頭単位の1列縦隊でハロン20~19秒のイーブンペースでの2400mのステディキャンターを実施し、火曜日と金曜日には4~5頭単位の2列縦隊でハロン18~17秒のイーブンペースでの2400mのステディキャンターを実施しています。これらのステディキャンターでの調教時には、場所に慣れている“オフ”の精神状態を利用し、群れを意識して馬群の中で落ち着くことと、1600m馬場の利点を生かした長距離を一定ペースで走行することによって持久力を向上させることを目的としています。

 

 一方、水曜日と土曜日に実施している強調教時には、1200mを2本走行させるインターバルトレーニングのスタイルを行うことによって、馬自らが“オン”の日であることを理解するように工夫しています。1本目は4~5頭単位の1列縦隊でハロン20~19秒でのステディキャンターを実施します。2本目は4頭単位の2列縦隊で5ハロンを77~75秒、つまりハロン16~15秒のイーブンペースでの強調教を実施しています。

 

動画.3月3週目の調教動画

 

 

育成馬を知ろう会

 

 ここからは、3月14日~15日に開催いたしました「育成馬を知ろう会」についてご紹介いたします。この企画は比較的馬主歴の浅いJRAの馬主の皆様に対して、「馬の見方」「セリにおけるレポジトリーの見方」などの講義、あるいは「調教師と交流」を趣旨にJRA馬事部生産育成対策室および当場が主催する形で実施いたしました。

 

初日はあいにく天候には恵まれませんでしたが、同じ種牡馬の産駒を比較して「馬の見方」に関する理解を深めるとともに、その知識を基にブリーズアップセール上場馬をご覧いただきました。夜には調教師との懇談会が開催されました。2日目は晴天に恵まれ、ブリーズアップセール上場馬の調教を間近でご覧いただきました。

 

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写真2.初日は同じ種牡馬の産駒を同時に比較して「馬の見方」の理解を深めていただきました。左:No51イットービコーの12(メス、父:エンパイアメーカー)、右:No10プラントオジジアンの12(メス、父:エンパイアメーカー


 

 今回の「育成馬を知ろう会」を始めとする新規馬主の皆様に対する様々な企画が「セリ市場に参加したい」あるいは「競走馬を所有したい」という意欲を持っていただくきっかけになれば幸いです。ご多忙中にもかかわらず、今回参加していただきました皆様方には、この場をお借りしてお礼申し上げます。

 

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写真3.2日目はBUセール上場馬の調教を間近でご覧いただきました。

 

 

育成馬展示会のお知らせ

 

 宮崎育成牧場では、ブリーズアップセールに先立ちまして、本年も4月7日(月)に「育成馬展示会」を開催いたします。なお、本年より10時開始となりますこと併せてお知らせいたします。以下に簡単な当日のスケジュールをお示しいたします。

 

10:10 ~ 比較展示(22頭を4班に分けて展示)

11:10 ~ 騎乗供覧(牡)

12:20 ~ 騎乗供覧(メス)

 

皆様方のご来場を心よりお待ちしております。

 

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写真4.昨年の展示会の調教供覧の様子。併走外は力強い走行を披露したファーストオーサー号(2013年2回新潟4日目1800芝未勝利戦優勝馬 父:アルデバラン 母:イナズマローレル)。

2014JRAブリーズアップセール関連情報(事務局)

○欠場馬情報について(4月18日現在)

57 テンノフェアリーの12   (父 ケイムホーム)        寛跛行のため

80 ビューティコマンダの12 (父 アルデバラン)    右肩跛行のため

 

JRA育成馬サイトのブリーズアップセールページにも掲載されております。

   http://jra.jp/training/bus.html