育成馬ブログ 宮崎⑦

GPS腕時計による調教タイム計測(宮崎)

前回のブログで、宮崎がプロ野球のキャンプ地として選ばれる理由は、「晴天率が高い」ということを綴りましたが、2月末から3月初旬にかけては、一転して天候の優れない日が多々ありました。しかし、ようやく朝夕の寒さも和らぎはじめ、場内にある桜のつぼみもの膨らみも徐々に目立つようになってきており、春を感じることができるようになりました。

季節の変化に敏感な育成馬達は、毛艶に輝きが増し、調教中の動きも俊敏さが目立つようになってきており、我々以上に春の訪れを喜んでいるかのように映ります。

                       

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写真① 3月初旬は天気に恵まれない日が続きましたが、雨の日でもでも寒さを感じることなく、グラスピッキングが行える季節となってきました。

 

 

育成馬の近況

さて、宮崎育成牧場のJRA育成馬22頭は、4月28日(火)にJRA中山競馬場で開催されるブリーズアップセールに向けて調教メニューをこなしています。

500mトラック馬場では、速歩2周の後、直線はキャンター、コーナーは速歩という調教を左右両手前で2周ずつ実施しています。500mトラック馬場での調教は、ウォーミングアップとしての目的があることはもちろん、スピード調教を繰り返していくと、ハミにかかる傾向が強くなるのを改善する目的もあるため、ハミを必要以上に取らずに、馬自身のバランスで走行させることを主眼に置いて実施しています。

一方、調教のベースとなる1600m馬場では、4~5頭単位の1列縦隊でハロン22~20秒のイーブンペースでの2400~3000mのステディキャンターを基本調教としています。週1~2回のスピード調教では、1200mを2本走行させるインターバルトレーニングを実施し、2本目に3ハロンを45~48秒(ハロン15~16秒)程度で走行しています。

スピード調教時には調教後に血中乳酸値濃度を測定し、科学的な側面から適切な負荷を模索しています。科学的指標に頼ることによって客観性は高まる一方で、データへの興味が高まることによって機械的に調教メニュー立ててしまう状況に陥りやすく、馬の状態を省みない状況を生み出す過ちを犯しがちになります。そのため、常に走行時や走行後の息遣いのみならず、特に牝馬ではメンタル面を確認しながら、各馬に応じた負荷をかけるよう自問自答しています。

順調に調教を実施できている馬では、血中乳酸値濃度の個体差も少なくなってきており、ある程度のスピード調教を実施できる基礎体力は養成できた段階に入ったものと感じています。

 


動画 2月下旬の調教動画。

   

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写真② 週1~2回実施している牝馬の強調教時の様子。メンタル面を考慮して、縦列中心で実施しています。

 

 

GPS腕時計による調教タイム計測

ここからは、宮崎育成牧場で実施している「GPS腕時計」による調教タイム計測について触れてみたいと思います。

「GPS」という言葉からは、カーナビやスマートフォンが連想されますが、昨今では腕時計にも「GPS」が搭載され、マラソンランナーのマストアイテムとなっています。「GPS腕時計」にはストップウォッチ機能を用いたタイム計測はもちろん、走行距離、走行スピードや走行ペースなどを計測することもできます。さらに、トラック周回や一定距離毎の区間タイムを自動的に測定する「オートラップ機能」を搭載しているため、一度ボタンを押しさえすれば、ランニング中にボタンを操作することなく、ラップタイムを計測することが可能となります。

この「GPS腕時計」の「オートラップ機能」を利用し、200m毎の区間タイムを自動計測するように設定することによって、200m毎、つまり1ハロン毎のラップタイムの自動計測が可能となります。騎乗中にタイムを確認することは困難ですが、調教後には腕時計のボタン操作のみでラップタイムを確認できます。さらに、パソコンやスマートフォンにデータを取り込むことによって、毎日のデータが保存でき、リアルタイムでデータの共有が可能となります。

「GPS腕時計」は2万円程度で購入できるため、比較的安価で容易に調教タイム計測が可能となります。ただし、「GPS腕時計」のなかには、200m単位での「オートラップ機能」の設定ができない機種もありますので、ご注意ください。

 

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写真③ 「GPS腕時計」に取り込まれたデータはパソコン等で保存でき、データが共有できます(左)。また、パソコン上では1ハロン毎のラップタイムのみならず、走行ルートやラップ計測区間等の詳細な情報も表示されます(右)。